寝画と言う、寝る時に毎回、腕にペンをくくりつけ寝ている間に絵を描く。
それを365日、毎日欠かさず何年も続けている。
また、飛行機に乗りながら、1フライトで1つの絵を完成させるなど、常に芸術の事を考えている。
そんな話を聞かせて貰っている時に、話してくれた数年前の心筋梗塞になった話が心に響いた。
『実は数年前に心筋梗塞になったんですよ。 急に胸が苦しくなって。やばい!って。』 1年前に身内を心筋梗塞で亡くしてて、これは心筋梗塞だって直ぐ分かったそうです。
『胸がすごく痛くて、死ぬって思いました。 その死に際に、救急車に連絡するか、もしくは最後に絵を描くかどうしようかと自問自答したんです。』
それで、Kenさんは絵を描く方を選んだそうです。
その時、数年前から寝画と言う、寝ている時にペンを手に巻きつけて寝ながら描く作品を365日描いていました。
死ぬ時もこの寝画を描こうと思ったそうです。
毎日違う色で描いていて、日曜日は赤の日でした。
やっぱり赤なんですね。
それで、赤ペンが無かったから、心臓を抑えて、家まで描きに帰ったそうです。
赤ペンを手に巻きつけて、最後の作品を描きました。
描ききった時、自分はそこまで有名には、ならなかったが最後は芸術家で終われた。良い人生だった。
そしたら、意識が無くなってきて、光に吸い込まれる様な感覚になりました。
『自分もそうだったが、人が死ぬ時は凄く悲しくて寂しがったりするけど、死ぬ本人は、そんな事無くて、凄く気持ち良いんです。 縛られたものから解放される様な、凄く気持ちが良いんです。』
『あぁ、これで自分は死ぬんだなと思って、ふと下を見ると床一面にトランプが敷き詰められてたんです。 何だろうと思って。 意識の世界なので、トランプの1枚にズームしようとすれば出来るんです。それで、1枚のトランプをズームして見ると、それはトランプじゃなくて、中学生の自分だったんです。 あれっと思って他のも見て見ると、高校生の自分なんです…。 これってトランプじゃなくて、全部、今までの過去自分だと分かったんです。』
『うわっ、これが走馬灯だと思いました。 最後に1枚だけ、どれか選ぼうと思ってトランプを手に取ったんです。で、取った1枚が未来の自分だったんです。そしたらいきなり胸が苦しくなって、意識もはっきりして、現実に戻ってきて。 時間も1時間位元に戻ってて、何か生きなきゃと思ったんです。 それで、滅茶苦茶、心臓痛くて救急車に電話して、心筋梗塞なんです!助けてくれって言って。 家の前まで、自分で行って救急車止めたから、最初全然信じて貰えなくて。(笑) でも本当に心筋梗塞で、3日間、集中治療室で意識不明だったんです。 その後、目覚めて助かってから、残りの人生は全て芸術に捧げようと思って生きてます。』
凄い話を聞かせて貰った。 そんなKENさんに山中先生は、革のジャケットに何か描いて欲しいと頼んだ。
その革のジャケットは、父親の形見で、お父さんが大切に着ていた物を、サイズが合わなかったので仕立て直して、今日初めて着てきたものだった。
それに、何か描いてくれと言うのが凄い。
何よりも出逢いと、その時の一瞬を大切にしている。
KENさんも、その話を聞いて、少し躊躇したが快く描いてくれた。
一瞬を楽しむ2人とその時間が気持ち良かった。
そんな想いの詰まった、どこにもない革のジャケットが出来上がった。
世界は森島さんを中心に回る。
絵になる人と言うのは才能だ。
面白そうな人、神経質そうな人、出来る人など、顔を見なくても遠目から、その人の出す雰囲気は分かる。
社長とお付きの人が良い例で、遠くからでも、どちらが社長かわかるもんだ。
それで言うと森島さんは、 登場姿はパーカーにスエット。
それでも、 立ち姿だけでセンスが良い人と一目で分かる。
何十年と流行の最前線で仕事をして来たからこそ、 離れても身体に染み付いている。
凄い人。
そんな森島さんが、 田舎町の中の端っこに住んでいるもんだから、 存在自体が絵になっている。
昔の車で寂れた港町を行くと、 おじいちゃん、おばあちゃんから、 手を振って挨拶される。
『やぁ、どこ行くの?』 『今度は誰連れて来たん?』 『この前の台風大丈夫やったか?』 町の人達にすっかり愛されている。
人情映画であるような、都会から田舎町にやって来た、男前の男性が最初は変人扱いされていたのに、いつの間にか町の人達と仲良くなり、最後に凄い感動を起こすような物語。
森島さんと大王崎は完全にその世界観。
この人は、自分で望まなくても、どこへ行っても、中心になってしまう人だと思った。
隠れても無理。
すぐに人に好かれてしまう。
良い意味での人たらし。笑 そんな人が、 次はどんな面白い事をするのだろう? 動く時が楽しみで仕方ない。
異色のみんなで、大王崎を街ブラ。 こんなメンバーで、こんな街を歩く事なんて、あるのだろうか? 奇跡…としか言いようがない。