ストーリー、先生・施術 紹介、新着情報
私は小さな頃からメイクが好きだった。
メイクは私を魔法少女にしてくれる。
メイクグッツは魔法の道具。
一つ一つが私を変身させてくれる。
小学生や中学生の頃、私にとってメイクは遊びの延長だった。
可愛くなるためという目的ももちろんあったが、友達とわいわい楽しくメイクをしあうのが楽しかった。
まるで遊ぶように、色んなメイクを試した。
動画やSNSには、たくさんの魔法のかけかたが紹介されていた。
友達と、ワクワクしながら、そんなキラキラした魔法の世界を楽しんでいた。
高校生になると、一気に行動範囲が広がる。
今までのような‘見て真似て魔法ごっこ’を楽しむだけでなく、自らメイク道具を探しに行ける。
メイクに限らず動画やSNSで紹介されている可愛いや素敵に実際会って手に取って体験出来る。
憧れの韓国や海外旅行にも出かけられる。
そして恋も楽しめる。
高校生。
早くなりたいと希望に満ちていた。
そんな私に待ち受けていたのは隔離された自分の部屋に引き籠もる青春だった。
「新型コロナウイルス感染症拡大に伴う、外出制限」
外に出て、触れ合うことが、悪になった。
当たり前のように友達ともっと沢山楽しい思い出を作れると思っていた。
当たり前のように恋愛を楽しみ、ドキドキするようなデートが出来ると思っていた。
今まで触れたことのない、可愛いや、素敵にも沢山出会えるそう思っていた。
私の青春は、常に混沌とした恐怖と孤独になった。
学校に通うことも少なくなり、家で勉強もするようになった。
外に出る機会が減ると、どんどん私は気持ちがネガティブになっていった。
朝はだるくて起き上がれなくなる。
常に眠たい。
空腹感はあるが、食欲はない。
あんなに好きだったメイクも、出かける機会が減ることで、どんどん億劫になっていった。
あんなに好きだったキラキラした世界が覗けるSNSは、見る度に苦しくなった。
もう誰とも会いたくない。話もしたくない。
すごく重い塊が常に背中に乗っている。
そんな感覚だった。
時が経ち、世の中がウィズコロナを合い言葉に動き出した。
それまで悪とされていた外出もふれあいも普通に出来るようになった。
すると途端に、こもらず出ようと急かされるような風潮になった。
少し前まで「出るな!こもれ!」と言っていたTVのニュースが一転、「出よう!経済を回そう!」と言う。
その変化の速さに、私の心も体も追いつかないまま、私は高校卒業を迎えた。
私は、誰かをキレイに、元気にする仕事がしたいと考えた。
暗い日々を過す中で、気持ちはどんどん沈みながらも、
心の奥底ではキラキラした世界へ必死に手を伸ばし、
その世界への憧れは尽きていなかった。
高校生の時の自分の経験から、キレイでキラキラして元気で居るためには、外面の美しさだけでなく、内面のコンディションが整っていることがとても大切だと痛感していた。
そんな時にであったのが東洋医学の思想。
心身一如。
心と体は表裏一体。
心が元気なら体も元気。
心が不健康なら体も不健康。
この考えが、とても腑に落ちて、同時にそんな思想で誰かのキレイや元気に役立てる仕事に就きたいと、鍼灸師の専門学校に入学を決めた。
鍼灸師になるための勉強は大変だが楽しかった。
外出する機会が増え、だんだんと私はまたメイクを楽しめるようになった。
しかし、コロナで引き籠もっていた期間を終えて再び外に出てみて驚愕した。
私は笑い方も話し方も忘れていたのだ。
それまで普通にしていた、友達との会話が辛くて仕方が無い。
自然に笑うことが出来ないから、どこか作り笑いのような自分の顔。
周りに気を使わせないように、必死に笑顔を作る日々。
私はまた部屋から出るのが辛くなった。
本当は外に出たい。
学びたい。
色んな人や物と触れ合いたい。
でも‘普通’の日常が私にはとても大変で、毎日が辛かった。
たまりに溜まった疲労で、私は動けない週に何日か起き上がれなくなった。
とにかく起きて、ドアを開けるのが大変だった。
それでも学びたい、鍼灸師になりたいという想いで、必死に学校へ通った。
在学中、エステの資格も取った。
それはまるでリハビリのような日々だった。
そんな日々を乗り越えながら、私は仕事を探し始めた。
家から出て、施術家としての人生をスタートさせるんだ。
そんな時に出会ったのが、山中鍼灸整骨院だった。
予防に特化して元気な人をより元気にキレイにする院。
一流の先生達から技術を学べる。
働く時間、曜日などは自由に選べる。
とても魅力的だった。
すぐに面接をお願いして、4月からお世話になることになった。
山中鍼灸整骨院は、出会う人皆が笑顔だった。
先生、受付さん、そして患者様たちも。
元気な声、笑い声、つやつやした肌。
素敵な大人が沢山居る。
そう思った。
施術技術も沢山教えてもらった。
教科書通りではない、実践型の学び。
患者様の施術も開始した。
私に体を預けて頂ける。
ただ純粋に、とても嬉しかった。
いよいよ施術家として、どんな施術をしていこうかと考える時が来た。
山中鍼灸整骨院にはマニュアルは無い。
一人一人の個性を尊重し、やりたい事をやらせてくれる。
私のやりたいことはなんだろう。
沢山考えた。
私の好き。
私の思い。
患者様から頂く言葉。
結果‘私は過去の私を救う施術をしたい’という結論に至った。
部屋から出ることが出来なかったあの頃。
心療内科への受診も考えたが、欲しいのは薬じゃなかった。
今になれば分かる。
きっとあの頃の私の自律神経は乱れまくり、荒れた体は心も蝕んだ。
鍼灸の心身一如という考え。
私はまだ鍼灸師の資格が取れてはいないけれど、今持つ技術で、患者様の自律神経を整え、体も心も軽くしたい。
そして、どうしても重くて開けるのが辛かったドア。
部屋の扉を開けて会いに来て欲しい。
そしてここに来たら、心も体も整い、帰る時は軽やかにドアを開けてキラキラした世界に出て行って欲しい。
その為には施術だけではダメだと思った。
空間も大切だ。
5感に響くようなサービスを提供したい。
いや、6感だ。
脳だけでなく体全体で癒しを体感して欲しい。
そう思うと、私の好きが爆発した。
温かく柔らかさが自慢の私の手で、患者様の疲れも自律神経の乱れも整えるヘッドマッサージ、オイルマッサージ、そしてインディバで触覚を刺激する。
耳から入る音楽はヒーリングミュージック。
インテリアの整った一室をお借りして、部屋に入った瞬間から、視覚からも癒しを届けたい。
特にこだわったのは、脳にダイレクトに伝わる嗅覚。私の選りすぐりのお香で空間を演出しよう。
施術の後は、京都にあるこだわりの茶葉で有名なお店のお茶を出そう。
体も心も整うと、きっと舌も敏感だ。ここもこだわりぬこう。
そして‘レイキ’で6感も刺激しよう。
頭を使うことに疲れた人に、心の浄化に役立つはずだ。
あの頃の苦しかった私を救いたい。
そう思いデザインしたメニューは、どれだけの人に受け入れてもらえるか分からない。
もしかしたら、独りよがりなのかもしれない。
でも、私の好きの裏側には、その物を作った人たちの想いが詰まっている。
私はこだわりぬいて大切に作られた物が大好きだ。
きっと、その作り手が大切に作り上げた品は、使う人をも癒してくれる。
特に心まで疲れてしまっている人に、届けたい。
心の奥では楽しみたいし、動きたいし、出て行きたい。
なのに体が動かない。
気持ちがどんどん沈んでいく。
好きだったことすら億劫で苦痛になる。
そんな人たちに私の作った癒しの小部屋に来て欲しい。
どうせ動けないなら、この癒しの小部屋でゆっくりしてほしい。
するとネガティブな心は消え、外に出たいという明るい気持ちに切り替わる。
私の周りにも、生き辛さを感じている人や、笑い方を忘れた人、コミュニケーションを楽しめないという悩みを持つ人が居る。
そんな人を薬では無く、私の手と私の好きが詰まった空間で癒やせたら。
そしたら、コロナで消えた私の青春にも意味があったと思えるはずだ。
私の時間は取り戻せない。
だからこそ、この辛い経験から学んだ事を活かして、沢山の人のキレイと元気の力になりたい。
それが私の施術家になった理由だ。